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ヨガベルトの起源…? アイヤッパン
ヨガに登場するヒンドゥの神さまたち vol.3
こんにちは。キミです。
シリーズでヨガとも関係のあるヒンドゥー教の神さまについて、書かせていただいています。今回は、アイヤッパン神です。北インドでは、あまり有名ではありませんが、アイヤッパン神は、南インドで人気の神さまです。
これまでご紹介したシヴァ神の第一王子であるガネーシャ神とは義母兄弟で、私たちのどんな願いでも強力にかなえると言われます。膝と腰に巻いたストラップ(ヨガパッタという名前)、現代のヨガストラップと似ています。
瞑想や呼吸法を練習するときに、こんな風にヨガベルトを使うと座位が安定します。
インドの神さまが描かれるイラストには意味があります。
アイヤッパン神のイラストは、心を象徴するものが多いのが特徴です。アイヤッパン神の足の象徴は、「さまよう心」という意味があります。「さまよう心」を固定するベルトは、「修行によって強化された叡智」を象徴しますが、練習を重ねるほどに、瞑想が安定してくることと似ていますね。
私たちが瞑想や呼吸法の練習の時に使うヨガベルトも、体を安定させることで心を安定するためのサポートツールですので、時代が違っても共通点を感じざるを得ません。
通常は、足を交差して座っている神さまが多いですが、アイヤッパン神は、足を交差せずに私たちの言葉でいうと体育座りで膝を開き、背骨を伸ばすという、柔軟性が必要とされるポーズで座っています。両足を交差して座っていることの意味は伴侶や子どもを持つことですが、足を交差していないアイヤッパン神は、伴侶を持たない独立した苦行者の象徴です。
アイヤッパンの右手の形は、「恐れずにいていいよという『守護の約束』のムドラー(印)です。ガネーシャ神もシヴァ神も、この手の形をして、人々を守っているのと同じです。対して左手の形は、脱力していて形になっていません。これは、心の不活動の象徴です。
ヨガの聖典に記載された有名な文言、
「ヨガとは心の働きを鎮めることである」
という言葉を象徴しているようですね。
さて、毎年インドツアーにご一緒するとき、アイヤッパン神を敬愛し、参拝するグループに遭遇します。インドでは、黒い衣服はあまり好まれないので、通常はこんな感じで、インド人の皆さんは、カラフルな色を着ています。
しかし、一年に一度の11月から1月くらいまでの限定期間で、アイヤッパン神の聖地に巡礼するみなさんが、黒装束で現れます。
このみなさんは、下記に挙げた規則(これはほんの一部)を守って、巡礼に備えます。
・厳格なベジタリアン
・裸足で一定期間歩く
・布団に寝ずにこの期間だけは床に直接寝るなど
アイヤッパン神の下に参拝する皆さんの多くは、大型バスに乗ってグループでやってきます。まるで人気のロック歌手のコンサートにでも行くようなノリノリな雰囲気が特徴で、大人から子どもまでとても楽しそうです。
車内でも、神を讃える歌(バジャン、キールタンといわれます)を歌い、日本語のノリで表現するなら、
『ノっているかい?』
『イェーーイ』
という雰囲気の高揚したやりとりも行われます。本当は神を讃えるサンスクリット語の祈りの言葉のやりとりなのですが、日本の厳かな雰囲気からは想像もつかない感じの明るいノリです。
日本で巡礼といえばお遍路さんですが、白装束で質素に歩く姿と、真っ黒でワイルドなイメージは対照的だなあと文化による違いを感じます。どちらの文化も、自分自身の幸福や内的な質を高めるための行為ですが、表現方法は芸術と同じで多様ですね。
神々や、祈りの方法、宗教のアプローチは多様ですが、祈りが届く先は1つ。インド人の信仰も、そんな多様なアプローチの1つです。
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文 ヨガインストラクター キミ/協力 SitaRama/編集 七戸 綾子